「明治大学事件」声明(2019年3月7日)
声 明
2019年3月4日、東京都労働委員会で首都圏なかまユニオンが取組んできた明治大学事件(平成28年不第90号事件)に対する命令書が出されました。
命令では、組合員の非常勤講師契約の更新等を議題とする団体交渉において、大学が具体的な説明を行わなかったこと、 及び大学が団体交渉申入れに応じなかったことは、不当労働行為であるとして救済されました。
首都圏なかまユニオンは、明治大学に対してこの命令を速やかに履行し、誠実に団体交渉に応じて本件紛争の解決の図るよう求めます。
(1)本件は
①明治大学の非常勤講師であった組合員の契約更新等に関する3回の団体交渉が不誠実団交に当たるか否か
②別の2回の団体交渉申入れを明治大学が拒否したか否か、拒否したといえる場合に正当な理由なく拒否したか否か
という2つの争点について都労委で審査されました。
(2)命令では、団体交渉に入る前に2度に渡って開催された事務折衝に対応していた法学部関係者が、団体交渉移行後には出席しなかった点に関して直ちに不当労働行為とはいえないとされました。
しかし、事務折衝で「28年度の雇用は無理であるが、29年度の雇用を検討する余地はある旨を説明した」経緯を踏まえた上で、大学側が「交渉が継続できるような対応であったとは到底いうことができない。大学は、法学部の教授を出席させるか、又は、法学部から十分な説明を受けた理事を出席させ、事務折衝の経緯を踏まえた上での交渉に努めるべきであったといえる」として「大学の対応は、不誠実な団体交渉であったといわざるを得ない」と判断しています。
明治大学が誠実に団体交渉に応じる義務を果たしていなかったことを都労委は明確に示しています。
(3)また、命令では、第2回・第3回の団体交渉において大学側が「1)法学部教授会決定に至るまでのプロセスを十分説明しており、これ以上団体交渉を重ねても、大学の回答に変化はないこと、2)大学としては、組合が今後の要求の趣旨や争点を明らかにせず、漫然と従前の要求を繰り返す限り、当面団体交渉に応じるつもりはないことを回答している」点について団体交渉を拒否したものと明確に判断しています。
そして、組合からの団交要求に対して「要求事項について交渉の余地はなく、団体交渉が行き詰まっている」として団体交渉を拒否した点も「大学は誠実交渉義務を尽くして」いないことから「団体交渉に応じる必要がないとの意思を示したもの」と判断しています。
このことは、大学における非常勤講師の「雇止め」などその地位を巡る問題について、非常勤講師の雇用の安定を図っていくために、労働組合が団体交渉を通じて切り拓くことができる課題を明示している点でも大きな成果であったと考えます。
(4)救済方法について、命令は、組合員の雇用問題が団体交渉によって進展しなかったことから、組合に対して「今後、このような行為を繰り返さないよう留意します」との文書を通知し、命令履行を都労委に報告することとしています。
当該組合員にとっては、「契約更新」や「再雇用」について実効性が確保されるものではありません。今後の交渉を通じて、1年ごとに契約更新を繰り返さざるを得ない非常勤講師の地位を、大学教育の継続性やその質の向上といった視点で制度的に見直しが図られていくことを社会的な課題としていく所存です。
(5)本件争議の解決に向けて、不当労働行為であった事実から出発して全面解決を求めていく新たな土俵が作られたことを活かして解決に向けた団体交渉を明治大学に求めていきたいと思います。明治大学に対して、改めて誠実に団体交渉に応じて、本件争議の解決を図るよう強く求めます。
2019年3月7日
首都圏なかまユニオン 委員長 伴 幸生
代理人 弁護士 指宿 昭一